フェルマータは汗もかかない

映画と本とそれからわたし

あの子の夢

なんであんな夢を見たんだろう。

 

わたしはあの子のことをそんなに好きではない。

いつもお洒落なもので身を包み、他の人なら浮いてしまいそうな赤色のリップをひいて、赤色の鞄を持って、あの子だけの世界を生きている。

それでいて、そう、わたしにも優しい。

紫からオレンジのグラデーションになる夕焼けに、ぴったりとはまってしまうような綺麗な紙を、まっすぐに両手を伸ばして掲げていた。

その写真をわたしが撮ろうとする頃には、もう空は真っ黒になっていた。

 

“特別な意味”なんてものは、ないのかもしれない。