映画『勝手にふるえてろ』あらすじと感想
バイト先の後輩が「人生の救いになる、とてつもなく素晴らしい作品に出会えた…」と☆5.0のレビューをつけているのを発見し、「いやー本当か?私の人生も救われたいぞ?」と半信半疑で映画「勝手にふるえてろ」を見ました。
監督:大九 明子
この監督の他の作品:意外と死なない、東京無印女子物語、でーれーガールズ、美人が婚活してみたら など
あらすじ(ネタバレなし)と感想を書き残します。
作品について
映画「勝手にふるえてろ」は2017年の日本映画です。
大九明子によって作られ、松岡茉優、渡辺大知、北村匠海、石橋杏奈などが出演しています。第30回東京国際映画祭コンペティション部門に出品されました。
原作となった小説は同じタイトルで綿矢りささんによって書かれたものです。
監督について
監督の大九明子さんは1968年生まれの日本の映画監督です。
明治大学政治経済学部卒業。在学中にフリーターや社会人も参加するコント集団に所属していたこともあります。卒業後に秘書として職についたが4か月で退職。スクールJCAというタレント養成スクールに通い、タレントや女優に転身しバラエティ番組などにも出演した経歴を持つ。(Wikipediaより)
秘書の職を辞めたのちに、タレント養成スクールに入りピン芸人としてライブに出演しても全く笑いを取れず、同期の活躍を横目に見ていただけだった。その後縁があって声をかけられた事務所に入り役者に挑戦。しかしイマイチ仕事ももらえず、やりたいことなのかもわからず悶々としていたという。そのタイミングでたまたま見つけた映画学校の生徒募集のチラシを見つけて入学。入学してから2年で自分の作品がコンペに選ばれる。大九さんは「何か違う」と感じたらすぐに仕事を変えてきたが監督業だけは違ったという。そして『過去を振り返って思うのは、仕事には我慢も大事だけど、つら過ぎると感じた時はその場にとどまらなくてもいいということ。「さすがにもうダメだと感じたら、私は次を見つけるために動きます。今よりは良いことがあると信じて。そうこうしているうちに自然に自分がやりたい方向へと進んでこられた気がします。かなりの遠回りではあったのですが(笑)』と独自の仕事観を語っています。(朝日新聞×マイナビ転職 Heroes Fileより)
あらすじ(ネタバレなし)
主人公ヨシカ(松岡茉優)は24歳にして、中学時代からの片思いの相手"イチ"(北村匠海)を引きずり続けている。会社で同期の“ニ”(渡辺大知)に人生初の告白をされ、気持ちが上がるものの、付き合うという関係には踏み出せずにいる。「死ぬかもしれない」経験から、「一目でいいからイチに会おう」と決めたヨシカはあり得ないような嘘をついて同窓会を企画。そしてついに再会のとき...!昔からの脳内片思いと現実世界のリアルな恋の行方は!?
どんな人にオススメ?
①“愛されたい”アナタ
②自己肯定感が高くないアナタ
③邦画へ苦手意識を持っていたアナタ
④松岡茉優の演技を見たことがないアナタ
感想(以下ネタバレあり、かも)
「邦画の恋愛もの」ってだけで何となく苦手意識を持つ方も多くないと思います。(映画好きな方だと特に。)
わたしも今まではそれの一人だったんですが、この作品は、わざとらしいシチュエーション…鳥肌…みたいなものはなくて、逆に言えばリアルすぎて…イタイ…みたいな。
まずは綿矢りささんの原作が素晴らしいわけですよ。(こちらは本のレビューの方で詳しく書き上げます)
映画という点で行くと、出演者の演技力が素晴らしい。
本作品でヨシカを務めた松岡茉優。ものすごくかわいいのに、普通の女(もはや普通を通り越したような本当にこの世の中に存在してそうな)を見事に演じ上げていました。
そしてニを演じた渡辺大知。さもすれば、もう中学生とかぶってしまいそうなイメージの瞬間もあれば、あれ?ちょっと劇団ひとりっぽい?いや、でもやっぱり普通にかっこいいな。という演技によって見せ方を変えられるすごい人でした。最初は「うわぁ~いるよなこういううざいやつ」「絶対彼氏にしたくねえ」という見え方だったのに、いつの間にか「あれ…かっこいい…」「アリかも…」ってなっていました。彼の本職はミュージシャンだとか。脱帽です。
そして監督がお笑いを経験したことがあるゆえの、ちょっとクスッとしてしまう言葉のチョイスやテンポ感、間合いが見ている人を飽きさせないです。
好きなシーンが2つあったのでその話を。
1つ目は東京上京組だけで開かれた飲み会の明け方に、イチとヨシカが二人でベランダで絶滅した生物の話をするシーン。
あそこはなんといっても明け方の空とビルの光が綺麗すぎて何回も見直してしまいました。
北村匠海演じるイチが、みんなに見せる顔よりもすこしだけ落ち着いて心を許していて、でも会話の内容に温度が上がっている。そして松岡茉優演じるヨシカは憧れのイチと、夢のようなシチュエーションで自分の好きな話題で話していることが嬉しくて、それでいて手放しにテンションが上がっているわけでもなく、女の子としての一面も垣間見える。そんな2人の演技と表情が素晴らしかった!
2つ目は何といってもラストシーン。
これはもう監督の演出力に脱帽です。心がぎゅんってなりました。
自分の見た過去の映画の中でも、好きなキスシーントップ3に入ると思います。
「あたしのこと愛してるんでしょ!こうやって野蛮なこと言うのもあたしだよ、受け入れてよ!」
相手の好きな人が自分じゃないと嫌なのは大前提で、「何となく好き」とかじゃなくてちゃんとそれが自分じゃなきゃ意味ないような「好き」が良くて。そんなところにこだわってしまうような小さい自分なんかのこと、自分は嫌いだけど、でもどこかで可愛いと思っている自分もいて、だからそんなわたしまでも手放しに受け入れて愛してほしくて。
こんなにも人間らしい綺麗ごとじゃうまくいかないような感情を、映画で扱い表現できるなんて、本当にこの作品はすごい。
原作が大好きなので、またそれについても後々レビューを書きたいと思います。